9thTOUR OF JAPAN速報

第1ステージ 大阪

 5月15日(日)、大阪府堺市の泉北周回コースにてツアー・オブ・ジャパン第1戦の大阪ステージが開催された。1周12.8kmのこのコース、道のりの半分までが上り基調、後半が下り基調だが、標高差にして50mほど。上りが多い今大会においてスプリンターが狙える数少ないステージの1つといえる。

 この日、序盤からいくつかの逃げはあったが、いずれも決定的なものにはならず、周回ごとに違うメンバーの逃げが見られるような状況だった。
 逃げが決まったのは残り2周ほどの地点。ブリヂストン・アンカーの福島晋一、愛三の廣瀬、シマノの狩野、NIPPO岡崎、ウィズミラクのトントン・スサント、パラファームのワン・カンポ、バルロワールドのケウラの7名の逃げで、一時は集団に対し1分近くの差をつけた。この差はなかなか詰まらず、もしや逃げ切り?と思われたが、最後の周回で集団先頭に固まったオーストラリアがペースを上げ、その差は一気に詰まった。そして残り2kmほどの地点で逃げは吸収。ラストは集団でのスプリント勝負となった。
 これを制したのはオーストラリアのマシュー・ゴス。2位に同じくオーストラリアのニコラス・サンダーソンが入り、オーストラリアのワンツーフィニッシュとなった。以下、3位カペックのアッサン・バザイエフ、4位バルロワールドのマッテオ・カッラーラ、5位にスミタラバネロパールイズミの飯島誠。
 ステージ優勝したマシュー・ゴスは個人総合リーダージャージに加え、ポイント賞リーダージャージもゲット。翌第2ステージは、グリーンの個人総合リーダージャージを着て走ることになる。紫色のポイント賞リーダージャージは中間スプリントポイントで積極的にポイントを獲りに行ったミヤタスバル綾部が着用する。

第2ステージ 奈良

 ツアー・オブ・ジャパン第2戦の奈良ステージは、東大寺大仏殿中門前がスタート地点となっている。ここから25kmのパレード走行を経て、集団は山添村布目ダム周回コースに移動。アップダウンのある1周10.1kmを12周することになる。

 この日はなぜかパレード区間からペースが速かったらしい。実際のレースがスタートする山添村布目ダム周回コースにたどり着いた頃には、集団の後ろでひらひらする選手が出ていたそうな。
 そんなこんなのアクチュアルスタート直後にアタックしたのがツール・ド・ランカウイで大逃げを決めて注目を集めたブリヂストン・アンカーの宮澤崇史。宮澤はまもなく集団に吸収されたが、代わって飛び出したのが同じくブリヂストン・アンカーの福島康司。数人がこれに反応。集団から追いつく選手もあり、やがて6名の逃げのグループが形成された。ここにいたのはブリヂストン・アンカーの福島康司、バルロワールドのカルデナス、プラサ、カペックのバザイエフ、そしてコニカミノルタのオーガスティン、ウィズミラクのマッケンジー。その後、集団から飛び出したバルロワールドのロンゴボギーニ、愛三の別府、西谷の3名が追いつき、先頭は9名となる。9名とメイン集団とのタイム差は、最大2分近くにまで広がった。
 終盤に入り、ブリヂストン・アンカーの田代、福島晋一あたりが後方集団のペースを上げた。耐え切れず遅れる選手も続出。しかし、先頭9名との差はなかなか詰まらない。
 他方、先頭9名からコニカミノルタのオーガスティンが脱落。8名での逃げとなった。そして、最終周回に入るあたりで愛三別府がアタック。プラサ、カルデナス、バザイエフらが反応。先頭グループが絞られた。
 ゴール手前の上りでウィズミラクのマッケンジーがアタック。そのまま逃げ切り、ステージ優勝を飾った。逃げのグループに3名を送り込んだバルロワールドのエース、フェリックス・カルデナスが2位。以下、3位カペックのバザイエフ、4位バルロワールドのプラサ、去年このステージで優勝した別府匠が日本人最高位の5位に食い込んだ。この後に逃げの残りの選手がパラパラとゴールし、1分23秒差の集団の頭はバルロワールドのカッラーラが獲った。

 個人総合リーダージャージはステージ優勝のデヴィッド・マッケンジー(ウィズミラク)の手に。以下、バザイエフ(カペック)、カルデナス(バルロワールド)が1秒差、プラサ(バルロワールド)が6秒差、別府匠(愛三工業)が9秒差で続いている。
 ポイント賞は大阪ステージに続き、このステージでも3位に入りゴールポイントを稼いだバザイエフ(カペック)、山岳賞は3つの山岳ポイントを2位、2位、1位で通過したプラサ(バルロワールド)が手に入れた。

第3ステージ 南信州

 今回初めてとなる南信州ステージ。JR飯田駅前をスタートし、7.3kmのパレード走行を経て、急な上りあり、ダウンヒルあり、ヘアピンカーブありの12.2kmの周回コースを12周する。ラストは元来た道を戻り、1kmほどのストレートを通って松尾総合運動場にゴールする。周回コースに平坦な箇所はほとんどなく、アップダウンの連続といえる。

 この日、3周目に4人の逃げが決まった。ここに含まれていたのはオーストラリアのメッドリ、ウィズミラクのブラッドフォード、カペックのシェスタコブ、コニカミノルタのペリー。4人は協力して逃げ続け、一時は後続に対して2分半程度の差をつけた。
 後続では、逃げに選手を送り込めなかったバルロワールドや日本勢が先頭でペースを上げ、周回を重ねるうちに先頭とのタイム差が徐々に詰まり始めた。その一方で、このペースについていかれない選手が集団から次々脱落。メイン集団は30名ほどに絞られた。

 動きがあったのは10周目。メイン集団からバルロワールドのケウラ、カペックのディアチェンコが飛び出した。ディアチェンコは先頭4人に追いつき、チームメイトのシェスタコブと合流。そのままペースを上げて、先頭はカペックの2人となった。が、ここまでで足を使っていたシェスタコブはやがて脱落。ディアチェンコ単独での逃げとなった。
 そして次の周回では後続集団からバルロワールドのフェリックス・カルデナスがアタック。カペックのバイグディノフがこれに反応した。
 カルデナス、バイグディノフはディアチェンコに追いつき、先頭はバルロワールド1名、カペック2名となった。

 数の上では有利なカペック。単独のカルデナスは最後の周回はほとんど先頭固定で逃げ続けた。そしてラスト1kmのストレートに入る手前でカルデナスが仕掛けた。カペックの2人は後を追えず。結局そのまま逃げ切ってカルデナスがステージ優勝を飾った。
 2位はカペックのバイグディノフ、3位同じくカペックのディアチェンコ、そしてすぐ後ろまで迫っていた集団の頭も同じくカペックのバザイエフが獲った。カペックは10位以内に5名も入っている。カザフスタン恐るべし。日本人最高位はシマノ野寺の8位。

 個人総合リーダーはステージ優勝のフェリックス・カルデナス(バルロワールド)。以下、デヴィッド・マッケンジー(ウィズミラク)が14秒差、アッサン・バザイエフ(カペック)が15秒差、ダビド・プラサ(バルロワールド)が20秒差、別府匠(愛三工業)が23秒差で続いている。
 ポイント賞はバザイエフ(カペック)、山岳賞はプラサ(バルロワールド)のまま変わらずという結果となった。

第4ステージ 富士山

 これまた今年初めてとなる富士山での山岳個人タイムトライアル。冨士浅間神社をスタートし、標高2000mの富士山須走口新五合目まで上る11.4kmのこのコース、平均勾配10.5%以上、最大勾配22%という、2004年のツール・ド・フランスのラルプデュエズでの山岳TT以上に過酷なコースプロファイルとなっている。
 出走順は基本的に個人総合の逆順。選手を30名ずつのグループに分けて、それぞれ1分間隔(個人総合上位5名については2分間隔)でスタートする。ただし、同じチームの選手が続けてスタートしてはいけない、1つのグループに同じチームの選手は3名以内というルールがあるため、スタート順には多少の変動がある。

 この日の出走者は85名。第1グループ30名、第2グループ30名、第3グループ25名で、それぞれ最初の走者が10時、12時、14時にスタートする。
 まず第1グループでトップタイムを叩き出したのは、18番スタートのスクーンラード(コニカミノルタ)だ。46分26秒というタイムは、第2グループ半ばまで塗り替えられることはなかった。
 これを塗り替えたのが同じくコニカミノルタのオーガスティン。42分5秒と、スクーンラードのタイムを4分以上も上回ってきた。
 さらに、第2グループ27番手スタートのミズロフ(カペック)が40分27秒でゴール。
 そして総合上位の選手が顔を揃える第3グループ。シマノの狩野、ウィズミラクのチュオーあたりが前の走者をごぼう抜きするなど健闘を見せたが、結局ミズロフのタイムを上回る選手は出てこなかった。
 個人総合リーダーのフェリックス・カルデナス(バルロワールド)は40分54秒でゴール。これは区間2位の成績で、山岳TTでの区間優勝こそ逃したが、個人総合リーダーの座を堅守した。また、区間優勝のミズロフは、個人総合でも2位に順位を上げた。個人総合3位は、区間3位のカッラーラ(バルロワールド)。
 日本人選手ではシマノの狩野選手の7位が最高。14位に終わった愛三の別府匠に代わって、個人総合でも日本人トップの7位にジャンプアップした(第3ステージ終了時点での狩野選手の個人総合順位は24位)。

第5ステージ 伊豆

 おなじみ日本サイクルスポーツセンターをスタートし、伊豆スカイラインを走行したのち、再び日本サイクルスポーツセンターに戻り、8kmサーキットを5周する、全長130.35kmのコースだ。伊豆スカイライン、日本CSCのサーキットともにアップダウンの連続で、実力差がはっきり出るレースとなるものと思われる。また、翌日の東京ステージはほぼ平坦でタイム差がつきづらいため、個人総合で逆転を狙う選手にとって、最後のチャンスとなるだろう。

 この日、序盤からアタックが相次いだ。そしてブリヂストン・アンカーの田代、福島晋一、シマノ狩野、パラファームのワン・カンポの4名の逃げが決まった。終始積極的にペースを上げていたワン・カンポが周回コースに入る手前で逃げのグループから脱落。日本人3選手での逃げとなった。
 後続集団の先頭でペースを上げるのは個人総合リーダーのカルデナスを擁するバルロワールド。一時は2分半近くまで開いたタイム差も徐々に詰まり始め、周回コース3周目には3名の逃げが吸収された。ただし、暑さも手伝ってか、バルロワールドの選手が集団先頭から脱落し始めた。第4ステージ終了時点で総合4位につけていたバルロワールドのダビド・プラサも足の痙攣で脱落。チームメイトと一緒にまったり流す姿が見受けられた。
 それでもカルデナスは強かった。4周目でカペックのディアチェンコがアタックした。これに反応したのはシマノの野寺とカルデナス本人だった。まずはディアチェンコを吸収。野寺のアタックも自ら潰し、ラストは自分でアタックし、単独逃げ切りでステージ2勝目を上げた。
 2位にはバルロワールドのカッラーラ、そして3位に地元修善寺の星、シマノ野寺が入った。

 個人総合は1位カルデナス(バルロワールド)、2位ミズロフ(カペック)、3位カッラーラ(バルロワールド)で変わらず。ただし、前ステージ終了時点で4位につけていたプラサ(バルロワールド)が遅れたため、以下1つずつ繰り上がり、シマノの狩野が6位、愛三別府が8位という結果となった。
 加えてゴールでのポイントを稼いだ結果、カルデナスはポイント賞もトップに。山岳賞リーダーもカルデナスなので、すべての賞を独占することとなった。あーあ。

 なお、この日、多くの選手が足切りにあったが、最終日の東京ステージには全員が出走できることになったらしい。「らしい」って?(^^;

第6ステージ 東京

 ツアー・オブ・ジャパン最終ステージ。日比谷シティ前をスタートし、大井埠頭周回コースを17周するコース。周回コースの設定に多少の違いはあるものの、ツアー・オブ・ジャパン最終ステージとしてお馴染みのコースだ。
 今回のツアー・オブ・ジャパンにおける数少ない平坦ステージ。これまで黙って耐えてきたスプリンター達が虎視眈々と狙っている。最終ステージを勝利で飾るのは誰だ?

 パレードスタートのないこのステージ。しょっぱなからアタックが相次いだ。周回コースに入り、4周目にキナンの橋川、シマノ大内、ミヤタスバル中川、ブリヂストン・アンカー田代、ウィズミラクのマットヌールの5名の逃げが決まった。後続からもいくつかのアタックがあり、それを機に集団が活性化。徐々にタイム差が詰まってきた。
 そして10周目に間近に迫った集団からスミタラバネロパールイズミの飯島、ミヤタスバル三船、ブリヂストン・アンカー清水、オーストラリアのクラーク、カジノフィリピーノのルゾンが追いつき、先頭は10名となる。そこから、ここまで逃げてきた橋川、大内、マットヌール、田代が脱落。しばらく頑張っていた中川も脱落し、先頭は5名となった。
 最後の周回で三船が集団に戻った。逃げの4名と後続集団の差は徐々に詰まり、残り数キロで逃げが吸収。集団スプリントへとなだれ込んだ。が、ゴール手前数百メートルの地点で、「Last ○○m」の看板に選手が激突。数名が落車に巻き込まれ、これを逃れた選手でのゴールスプリントとなった。これを制したのはオーストラリアのサンダーソン。カペックのバザイエフ、ブリヂストン・アンカー宮澤、ミヤタスバル三船の順でゴールした。

 ツアー・オブ・ジャパン、すべてのステージが終了。終わってみれば、バルロワールドのフェリックス・カルデナスが区間2勝を上げ、個人総合時間賞、個人総合ポイント賞、個人総合山岳賞の3賞を独占。まさにカルデナスのための大会のようになってしまった。
 団体総合時間賞はカペックが受賞。カザフの底力を感じた。日本がアジアで1位になるためには、着実にポイントを重ねてきているカザフスタンやイランに打ち勝たねばならない。日本国内で各チームが切磋琢磨することも大切だと思うけど、互いに力を合わせていくべき時期にきてるんじゃないかなぁ。ということで、表彰式後にプレゼンテーションが行なわれたAXIS-JAPANによるナショナルチームのプロジェクトに期待してます。いろいろ難しいこともあるだろうけど、頑張ってほしいな。

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