コースプロフィール:
ワーテルローからワスカルまでの210km。プロフィールマップで見る限り、序盤に細かなアップダウンはあるものの、おおむね平坦なスプリントステージに見えてしまうが、そういかないのが今年のツール。なにせツール・ド・フランドル、パリ〜ルーべのコースを通るのだ。まず14km地点に4級の山岳ポイントがある。そしてスプリントポイントが設置された42km地点はツール・ド・フランドルのゴール都市。これを過ぎると61km地点に「壁」と呼ばれる石畳の激坂がある。距離が短い(1.1km)のでカテゴリー3級だが、平均斜度8.4%、最高斜度は25%ってなんなんだ、それは。72.5km地点のスプリントポイントを経てプロトンはフランスへと入る。以降はほぼまっ平らに近いが、146km地点と184km地点にそれぞれ2.4km、1.1kmの石畳があり、おそらく風も強いだろう。見た目以上の難コースといえる。パンクや落車のトラブルに見舞われたら総合優勝争いから転落する可能性も大。タイヤやホイールの選択が今後の明暗を分けることになるかもしれない。あ、176.5km地点に3つ目のスプリントポイントがありますです。
現地の天候:
この日の天気は晴れ時々曇り。よかった、これで雨が降ってたら皆さん埴輪(はにわ)になってしまうところでした。気温は22〜23度。
レースの展開:
この日、第2ステージで落車して膝を痛めたコフィディスのフレデリック・ベシーが未出走。同じく前ステージの落車でファニーニ(ドミナ)がリタイヤしたため、この日は185人でのスタートとなった。
この日はスタート後3kmの地点でイェンス・フォイクト(CSC)がアタック。これにブラム・デフロート(ラボバンク)が加わり、2人での逃げとなった。14km地点の4級の山岳ポイントはデフロート、フォイクトの順で通過。後続の集団ではベッティーニ(クイックステップ)がトップ通過してポイントを重ねた。
42km地点のスプリントポイントも2名の逃げが先行。フォイクト、デフロート、集団の先頭はマキュアン(ロット・ドモ)が取った。
そして噂の「壁」、61km地点の山岳ポイント(3級)はデフロート、フォイクト、ベッティーニ、ヴィランクの順で通過した。ををー ヴィランクが今ツール初の山岳ポイント獲得だ。1ポイントだが(^^;。
加えて72.5km地点の2つ目のスプリントポイントはフォイクト、デフロート、ハスホフトの順で通過している。マイヨジョーヌを着て取りに行ったんだね。イリェスバレアレスの選手(誰だ?)が後を追うも追いつけず、頭を振りながら諦める映像があった。
先頭の2人は協力して逃げ続けた。集団とのタイム差は2つ目の山岳ポイント(「壁」ですね)あたりで一時3分ほどに縮まったが、また盛り返し、90kmほどの地点で6分半までリードを広げていた。
残り85kmほどの地点でフォイクトがバイクを交換した。すわメカトラか?と思ったら、石畳に備えての交換だったらしい。フォイクトはまもなくデフロートに合流。
後続の集団では、細い石畳の道に備え、さりげなーい位置取り争いが始まりつつあった。USポスタル、T-Mobile、フォナックあたりが前目に上がって来た。
なんだか集団が長くなって、パラパラしてると思ったら、集団の中ほどで落車が発生。20名近く(勝手に推測)が巻き込まれる大きな落車で、数名は左側の道路と畑の間の草むらというか溝というかに転落していた。転落して起き上がれなかったのがファッサボルトロのマルコ・ベーロ。肩のあたりが血まみれで、しかも腕が動かせない様子だった。他にエウスカルテルが3名ほど、クイックステップのマイケル・ロジャース、USポスタルの多分ノバル、サエコのグロムザー、コンメッソあたりも巻き込まれた。
と思ったらなんとエウスカルテルのマヨも落車していたらしい。バイクパンツの左側が大きく破けて擦過傷も痛々しい。なんとかレースに復帰し、一人で集団を追い始めた。
ちなみに草むらに倒れていたマルコ・ベーロは鎖骨を骨折してリタイヤ。ただし、血まみれになっていた肩に関しては、倒れたところに落ちていたビール瓶だかなんだかの破片で切ったもので、見た目ほどはひどくなかったらしい。とはいえ鎖骨骨折って時点ですでにひどいんだけどね。翌第4ステージ、ベーロはチームカーに乗ってレースを追っていたそう。骨折してて痛くないんでしょうか?
先頭の2人が石畳に入った。バイクカメラもげこげこしていて、ちょっと気持ち悪い。
先頭が通過してから2分半ほどして、集団も石畳区間に入った。USポスタルがしっかり先頭を固めている。ヒンカピー、エキモフ、ランディスの3人が強力に引いたため、集団が中切れを起こしていた。1つ目の集団にアームストロング、ウルリッヒ、ハミルトンら、2つ目の集団にリバティセグロス、ラボバンク、CSCあたり、3つ目の集団にマイヨジョーヌを着たハスホフト、モローらクレディアグリコル、デニス・メンショフらイリェスバレアレスといった具合。2つ目の集団はまもなく前の集団と合流したが、3つ目の集団はなかなか差が詰められなかった。
そしてさらにその後ろでは、落車で遅れたマヨを引き上げるためにエウスカルテルの面々が懸命に追っていた。USポスタルのノバル、サエコのコンメッソ、エフデジュのダクルズもここにいる。やがてこの集団は、ハスホフトらの集団と合流。前の集団に追いつくべくペースを上げた。
先頭のフォイクトとデフロートと、背後の集団との差が徐々に詰まってきた。2人は諦めて待つ様子。デフロートなどはニュートラルのバイクから水のボトルを4〜5本もらって、ポケットやら背中やらにぼこぼこ入れてアシストの準備をしていた。そして残り40kmといったあたりで2人は吸収。先頭は40人ほどの集団となった。背後のハスホフト、マヨらの集団とは約2分の差。
3つ目のスプリントポイントは、ホンド(ゲロルシュタイナー)、オグレディ(コフィディス)、ナゾン(AG2R)の順で通過。
追走集団の先頭ではエウスカルテルが一生懸命ペースを上げようとしていた。前に追いつかないと困るのはクレディアグリコルも一緒のはず。なのになかなか前には出てこなかった。最初から協力して引っぱってれば、石畳に入る前にもうちょっと詰められてたかも? それとも翌日のチームTTに備えて足を残しておきたかったんだろうか?
そしてまた石畳区間がやってきた。カメラバイクが遅くて、先頭を引いていたT-Mobileの選手の選手と接触しかけ、T-Mobileの選手があわやコースアウトというシーンがあった。その影響か、集団後方で落車発生。落車したのはコフィディスのオグレディ。たいした怪我はなさそうだったからよかったけど、お願いだから勘弁してくれ。
と、ちょうどその頃、集団の先頭ではアレッシオのフヴァスティヤが抜け出していた。しばらく単独で逃げたが、やがて集団に吸収。
先頭集団の後方で、踏み切りに引っかかった選手が。T-Mobileのボテーロ、エフデジュ、バクステット、オグレディあたり。落車などで遅れて後方にいた選手が引っかかったという感じか。
後続も石畳区間を通過。2分前後だったタイム差が2分半ほどに広がった。残りの距離数も少なくなって来た。ゴールに近づけば先頭集団のスピードはもっと上がるはず。なのに後続のペースが上がっていないように見えるのはなぜなんだ? 諦めてしまったのか?
残り13km地点でラボバンクの選手が落車。多分デフロートがバイクにまたがりレースに戻るところ。もう一人ワウテルスは地面に横たわってなかなか起き上がれない。コーナー立ち上がったところで中央分離帯に激突してしまったんだろうか。なんとか助け起こされてレースに復帰することができた。
残り9km地点で先頭集団からR.A.G.T.のカルザティがアタック。ファッサのフレチャ、ゲロルシュタイナーのラング、AG2Rのスキャンロン、ロット・ドモのメルクスあたりが後を追ったが、集団もこれを逃がすわけにはいかない。本気で追いにかかった。逃げの5人は牽制状態。というのはカルザティ以外は全員スプリンターを抱えたチームの選手だ。ただ単純に逃げ切りを期待して入っている選手ばかりではないだろう。もう1人追いついて6人になったが、吸収されるのは時間の問題だろう。
カルザティが最後の抵抗を見せて1人で逃げた。が、集団が追いついてきて、先頭は1つの集団に戻った。
残り5km。後続集団とのタイム差は約3分。後続が追いつくことはまずないだろう。
そして集団の先頭にファッサボルトロの列車ができはじめた。ロットも1人紛れ込んでいる。ゲロルシュタイナーが3人ほど前の方に上がってきている。
ラストは1400mのストレート。ファッサのアシストが後ろを振り返り、ペタッキの姿がないことを確認し、脇によけた。ゲロルシュタイナー先頭でスピードを上げる。ゲロルシュタイナーのアシストが1人左によけた。ゲロルシュタイナーがもう1人。が、肝心のホンドは5〜6人後ろに隠れてしまっている。右側からAG2R、左側からT-Mobile。AG2Rのブロシャールの背後から現われたのはナゾンだ。背後にツァベル、そして左に大きく離れてマキュアンがスピードを上げる。この勢いならマキュアンか?と思ったら意外に伸びず、ラストはナゾンとツァベルの争いに。2人ともハンドルを投げたが、ホンのちょっとだけナゾンの方が速かった。ステージ優勝はジャンパトリック・ナゾン、ツァベル、マキュアン、ボーネンの順。
と書いたんだけども、上空からの映像でじっくり見てみたら、実はAG2Rのブロシャールの後ろにいたのはキルシプー。これを背後から猛烈な勢いで追い上げ、かわしたのがナゾンだったというわけ。でもってマキュアンはというと、中央から左に大きく振ったところ、左から右に振ったホンドとあわや接触しかけ、寸前かもしくはちょこっと当たったところから猛烈に加速。ただし最後があまり伸びず、ステージ3位という結果になった。
それにしても、ジャンパトリック・ナゾン。相変わらずキュートなんだけども、体のラインがすっかり変わっていて驚いた。後ろから見たらキルシプーと区別が付かないよ。足腰がすっかり筋肉質な感じだ。
アームストロング、ウルリッヒ、ハミルトンら個人総合優勝狙いの選手の多くはナゾンから5秒遅れの大集団でゴール。
後続集団はというと、先頭から3分53秒遅れ(アームストロングの集団からは3分48秒遅れ)でゴールした。マヨ、スベルディア(エウスカルテル)、クリストフ・モロー(クレディアグリコル)、デニス・メンショフ(イリェス・バレアレス)らが個人総合で大きく水をあけられてしまった。特にマヨのタイムロスが痛い。クライマーに有利と言われるコース設定、しかも本人好調だっただけに惜しまれる。自らの不調で遅れたならともかく、落車で遅れてしまったのはとても残念だ。
放送中で触れられていたんだけど、T-Mobileのアルダークが事前のインタビューに答え、「このステージでマイヨジョーヌ争いから脱落する選手が出てくるだろう。敢えて誰か一人挙げるとしたらマヨかな」とコメントしていたそうだが、ホントにその通りになってしまった。って、実はアルダークもマヨと同じ集団でゴールしてるんだけどね(^^;。
で、個人総合に目をやると、マイヨジョーヌを着ていたハスホフトが遅れたため、スプリントポイントとゴールでボーナスタイムを稼いだロビー・マキュアンが個人総合トップに立った。ロビー・マキュアンのマイヨジョーヌ姿って初めて見たわ。現在の個人総合上位はほとんどがスプリンター。なんかとっても可愛い順意表になっている(笑)。
でもこれはあくまでツール序盤ゆえのリザルト。最終的にマイヨジョーヌを狙う選手が活躍するのはまだまだこれからだ。
でもってJ SPORTSの中継のクイズにもなったペタッキはというと、なんと72位でゴール。この日、落車で鎖骨を骨折してリタイヤしてしまったマルコ・べーロの不在が精神的にも痛かったんだろうか? しかし、それにしてもこのクイズに正解した2名って…。すごすぎる。
とりあえずこの日印象に残ったのは、アームストロングがシェリル・クローについて「だって彼女はロックスターなんだよ。なのに普通の女性のように僕のためにご飯を作ってくれたり洗濯をしてくれたりするのがとても嬉しい」とコメントしたというのが話題に上った際に、ゲストの橋川選手が言った「『おまえ、アームストロングだろー?』って感じですね(笑)」って言葉。今年のツール一番のツボだったかもしれない(笑)。
●ステージ順位 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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●個人総合 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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