2004 ツール・ド・フランス 第6ステージ

コースプロフィール:
 ツール・ド・フランス第6ステージはボヌバルからアンジェまでの196km。この日は山岳ポイントは一切なし。おおむね下り基調のステージだ。終盤はほぼフラットだが、ゴール手前に2つの90度カーブがあるので要注意。スプリントポイントは、51.5km地点、132km地点、168km地点の3ヶ所。
 この日プロトンが通過するロワール地方は、前日マイヨジョーヌを獲得したヴォクラーのいるブリオシュ・ラブランジェールの本拠地。ヴォクラー自身もロワール地方出身ということで、地元の盛り上がりもかなりのものだろう。

現地の天候:
 この日の天気は曇り時々晴れ。曇りのち雨、ところにより雷雨なんて予報だったけど、当たらなくてよかった。この日も風が強かったみたいね。気温は18度の予報。でもニーウォーマー、アームウォーマー、シューズカバーなどをしている選手が多かったところを見ると、予想よりちょっと気温が低かったのかも。

レースの展開:
 この日、ペタッキチッポリーニが未出走。ペタッキは前ステージでの落車で肩を強打。骨に異常はなかったが、腕が上がらないほどの痛みがあったそう。チッポリーニも落車した際にジロで怪我した箇所をもう一度痛めてしまい、そこが化膿してのリタイヤだったらしい。ちょっとずつ調子が上向いてきたという発言もあったようだし、今後スプリント勝負に絡むチッポリーニが見られるかも、と期待していただけに残念です。
 第5ステージでリタイヤしたブラッドリー・マクギー(エフデジュ)、タイムアウトになったマリアン・アリー(ブリオシュ)を含め、179人でのスタートとなった。

 ホントのホントに落車が多い今年のツール。この日もスタート後16kmの地点で大きな落車があった。集団の前の方で起こった落車のようで、ランス・アームストロングもこれに巻き込まれ、右ひざに擦過傷を負った。でもまぁとりあえずダメージはそれほど大きくなかったようで、アシストの助けも得てすぐに集団に戻った。この落車には、エラス、それからゲロルシュタイナー、エフデジュ、ドミナ、ロット・ドモあたりの選手も含まれていたらしい。
 そして落車で遅れた選手達が集団に戻り、再び1つの集団になった頃、カルロス・ダクルズ(エフデジュ)、アレッサンドロ・ベルトリーニ(アレッシオ)、マルク・ロッツ(ラボバンク)の3人が逃げ、数キロ後にフアンアントニオ・フレチャ(ファッサ)、クルトアスル・アルヴェセン(CSC)、ジミー・アングルヴァン(コフィディス)が合流。6人での逃げとなった。最初のスプリントポイントはダクルズ、ベルトリーニ、アルヴェセンの順で通過。アルヴェセンは第2ステージでゴール直前、カスペールと2人で落車した選手。スプリントに強い選手なので、逃げ切ってスプリント勝負となったらアルヴェセンの勝算が高いだろう。フレチャというと去年の弓を引くゴールパフォーマンスの印象が強い。去年はiバネストの選手だったけど、今年はファッサに移籍してのツール参加だ。
 ともあれ6人は徐々にリードを広げ、60kmほどの地点でその差は4分ほどになった。残りの距離が減るにつれ、後続の集団ではスプリンターを抱えるチームがペースを上げ、6人を射程圏内に収めようとするが、タイム差は思ったようには詰まらない。

 2つ目のスプリントポイントはダクルズ、アルヴェセン、ベルトリーニの順で通過した。メンツは一緒ね。
 大集団の先頭交代にマイヨジョーヌを抱えるブリオシュ・ラブランジェールも加わり始めた。クイックステップ、ゲロルシュタイナー、AG2R、ロット・ドモらと協力してペースを上げ、先頭とのタイム差が縮まり始めた。残り50kmほどの地点で6人のリードは2分半。

 そして最後のスプリントポイント手前でアングルヴァンがアタック。誰も着いて行かなかった。スプリントポイントは、アングルヴァンが先行のまま通過。アルヴェセン、ダクルズがポイントを取った。
 このまま逃げが決まるのかと思ったら、やがて後続が追いついた。が、アルヴェセン、ベルトリーニの2人が遅れ、4人での逃げとなった。
 大集団が本気になって追い始めたが、4人の逃げが強力で、なかなか差が詰まらない。それでも残り10kmのアーチをくぐった頃にはタイム差が1分を切り、直線になると前方に見えるようになってきた。

 残り6kmを切った頃、フレチャがアタック。残りの3人もすぐさま反応し、アングルヴァン、ロッツ、ダクルズの順で後を追った。が、なかなか差が詰まらない。フレチャは単独で逃げ始めた。
 フレチャは快調に逃げ続ける。ここまで170kmほども逃げ続けてきたとは思えない。さら足のようによく回っている。
 他方、一緒に逃げ続けてきた3人は残り5kmあたりで集団に吸収。ロッツがダクルズの肩を叩き、互いの健闘をたたえ合う。

 残り4km。カーブが続き、道幅が狭い。道路の片側一車線(+自転車レーン?)をコースにしている。自転車レーンがあるのがうらやましいなぁ…ってこれはレースとは一切関係なし。
 残り3kmでタイム差は15秒。後続はゲロルシュタイナー、クイックステップあたりが強力に引いている。フレチャの足もさすがに鈍ってきた。なかなか微妙な感じになって来た。

 そして残り1kmのアーチのあたりで集団に吸収。道の左側を下がっていく。先頭はゲロルシュタイナー。このまま集団スプリントになだれ込むのかと身構えたら、集団の比較的前目で落車が発生。集団の左側での落車だったので、もしかしたら吸収されたフレチャが下がっていく際に接触したのかもしれない。かなり多くの選手が巻き込まれ、しかもゴール前スプリントに向けてスピードが上がっているところだったので、怪我の程度がひどい選手も多かった。特にひどかったのはゲロルシュタイナーのハーゼルバッハー。柵の際で倒れたまま動けなかった。ゴール前ジャスト1kmの地点での落車だったため、救済措置でゴールしたとみなされたものの、鼻骨と肋骨3本を骨折して翌日未出走となった。
 そんなこんなで進路が詰まって止まってしまった選手も含め、巻き込まれた選手はおそらく百数十人。ゴール前スプリントに加われたのは20人ほどだった。
 左カーブを立ち上がり、直線に入った時、先行していたのはイリェスバレアレスのベッケか。背後にはドミナが2人。その背後にクイックステップのボーネンがつけている。ツァベル、ホンドの姿も見える。そしてラストの右カーブ。イリェスバレアレスの選手は左によけ、ドミナ(マリナンジェリか?)が先行。背後につけているのはボーネン。残り380mの直線でボーネン加速。もうむりくり踏み倒す。ツァベル、オグレディ、ホンド、クックが追い上げるが届かず。ボーネンは両手を高々と挙げてゴールした。

 落車に巻き込まれた、あるいは進路がふさがれ動けなかった選手らがぱらぱらとゴールした。痛々しかったのはマイヨヴェールを着たマキュアン。お尻のあたりが大きく破け、お尻が真っ赤になっていた。ナゾン、ベッティーニらもアシストにサドルを押されながらゴールにたどり着いた。悲壮感が漂っていたのはシモーニ。ヘルメットを脱いでハンドルバーの上に乗せ、アシストに囲まれながらのゴールだった。
 チームタイムトライアルでのタイムロス(最後のコーナーで落車し、チームメイトよりちょっと遅れてゴール。チームメイトと集団で入っていれば順位によるタイム差しかつかなかったのに、遅れてゴールしてしまったために実際のタイムの2分42秒遅れという記録になってしまった。チームメイト、チームとしてのミスという側面があったとはいえ、やっぱりヘンだ、このルール。そういう中途半端なことをするぐらいならチームTTやめればいいのに)でかなりモチベーションが低下していたらしいシモーニ。「昔からツールなんか嫌いだった」みたいなミもフタもない発言もしていたって話だ。さらにモチベーションが低下してリタイヤしてしまわなければいいんだけど。どうでもいいが、細い口ひげ生やしたシモーニは、ちょっと胡散臭げだ(笑)。

 ゴール後、ステージ優勝したボーネンの肩をツァベルが叩いてねぎらう。ツァベルもいい位置にはいたんだけどね。
 トム・ボーネンというと、ツール開幕前から注目している人が多かった。ボーネンは1980年生まれの23歳。ベルギー生まれでクラシックレースが得意(USポスタルのメンバーとして参戦した2002年パリ〜ルーべで3位に入ったのが印象深い。当時のボーネンはまだ21歳。すげー選手が出てきたもんだと驚いた)ということで、今年引退したムセウの再来ともいわれる選手だ。今年のツールではクイックステップの選手がバリバリ集団を引き倒している映像がよく見られるが、それが報われた瞬間だろう。一緒にゴールできて一緒に祝えたらもっとよかっただろうけど。

 でもってマイヨジョーヌを着たヴォクラーは落車にも巻き込まれず、でもちょっと遅れてゴールした。当然のごとくタイム差もつかず安泰。もちろんマイヨブランも。
 ポイント賞はゴールポイントを稼いだオグレディが落車で遅れたマキュアンを逆転してマイヨヴェールを手にした。
 山岳ポイントはなかったのでベッティーニのまま変わりなし。

★ステージ優勝
トム・ボーネン(クイックステップ)
★個人総合(マイヨジョーヌ)
トマ・ヴォクラー(ブリオシュ・ラブランジェール)
★ポイント賞(マイヨヴェール)
スチュアート・オグレディ(コフィディス)
★山岳賞(マイヨブラン・アポアルージュ)
パオロ・ベッティーニ(クイックステップ)
★新人賞(マイヨブラン)
トマ・ヴォクラー(ブリオシュ・ラブランジェール)
★チーム総合
チームCSC
★敢闘賞
ジミー・アングルヴァン(コフィディス)
●ステージ順位
順位名前チームタイム
1トム・ボーネンクイックステップ4.33.41
2スチュアート・オグレディコフィディス
3エリック・ツァベルT-Mobile
4ダニロ・ホンドゲロルシュタイナー
5バーデン・クックエフデジュ
6セルジョ・マリナンジェリドミナヴァカンツェ
7ジェローム・ピノーブリオシュ・ラブランジェール
8ジュリアン・ディーンクレディアグリコル
9ヤネク・トンバックコフィディス
10サムエル・デュムランAG2R
spacer
●個人総合
順位名前チームタイム
1トマ・ヴォクラーブリオシュ・ラブランジェール24.37.30
2スチュアート・オグレディコフィディス3.01
3サンディ・カザルエフデジュ4.06
4マグヌス・バクステットアレッシオ6.06
5ヤコブ・ピールCSC6.58
6ランス・アームストロングUSポスタル9.35
7ジョージ・ヒンカピーUSポスタル9.45
8フロイド・ランディスUSポスタル9.51
9ホセ・アゼベドUSポスタル9.57
10ホセルイス・ルビエラUSポスタル9.59

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