コースプロフィール:
やってきました山岳個人タイムトライアルが。ブール・ドワザンからラルプデュエズの15.5kmは、最初の1.7kmこそほぼフラットだが、以降は平均斜度7.9%、最大斜度11.5%の九十九折の急坂となる。
ゴール地点に超級の山岳ポイントが設定されており、ステージ優勝を果たした選手には超級の山岳ポイント(20ポイント)の倍、40ポイントが与えられる(ステージ最後の山岳が2級、1級、超級の場合にポイントが倍になるというルールから)。
この峠には21のヘアピンカーブが存在し、それぞれのコーナーにステージ優勝者の名前の入ったパネルが飾られている。歴代の勝者は23名。24人目となる今年のステージ優勝者の名前は下から3番目のコーナー(すでに3人目の勝者Hennie Kuipperのパネルがある)に刻まれることになる。
ちなみにラルプデュエズの最速登坂記録は、今年の2月に急逝したマルコ・パンターニが1997年に打ち立てた37分35秒。このステージはマルコ・パンターニに捧げられる。
現地の天候:
J SPORTSのツールメールマガジンでは「曇り、雷の恐れあり」、オフィシャルサイトでは6km地点以降に雨マークもついていたが、天気は最後までもった。もう雨はたくさん。シャンゼリゼゴールまで晴れが続くといいな。
レースの展開:
最初の走者のスタートは現地時間の14時(日本時間の21時)。第15ステージ終了時点での個人総合成績下位の選手から1分間隔でスタートし、ラスト22人は2分間隔でのスタートとなる。
中継開始時点での暫定トップは7人目にスタートしたフランチェスコ・セッキアーリ(ドミナヴァカンツェ)。これを16番手スタートのルドヴィック・マルタン(R.A.G.T.)が3分近くも速いタイムで塗り替えた。
34番目にスタートしたロビー・マキュアン。タイムアウトになるんじゃないかという巷の評判をよそに、ストイックな表情で淡々と踏んでいた。と思ったら、思い切りブーイングを浴びせかける観客に対し、笑顔で手を振り走り去るマキュアン。しかも20分ほど後に映し出されたゴールのシーンではウィリーをかまして大げさに額から汗をぬぐうパフォーマンスまでしてのけた。ううむ。ここんとこ私の中のマキュアン株が急上昇中だぞ(笑)。嫌いじゃない、この人。
2位に入る選手はいても、暫定1位はしばらくの間マルタンのまま変わらなかった。これを塗り替えたのは97番目にスタートしたミケル・アスタルロサ(AG2R)。なかなかいいタイムだが、これからゴールする選手が60人。しかも総合上位の選手がこれからバンバン登場する。記録は次々塗り替えられることになるだろう。
それにしてもUSポスタルのワンピースは、脇が透けていてちょっとえっちだ(笑)。背面の中央部分にもシースルーの部分がある。バイクだけじゃなくてウェアもどんどん進化していくんだなぁと。
総合22位のオスカル・セビリャ(フォナック)スタート。男の人にもったいないぐらいまつげが長い。どうでも良すぎる感想だが、山岳TTってヘルメットをかぶらない選手が多いから、選手の表情がよく見えてありがたい。
山岳賞ジャージを着たリシャール・ヴィランク(クイックステップ)登場。右のふくらはぎあたりにタトゥーが入ってるのね。何の模様なんだろう? 美蘭矩、みたいな漢字だったら笑うんだが、そんなことはなかった(笑)。
アスタルロサの記録は、マルコス・セラーノ(リバティセグロス)、ダビー・モンクティエ(コフィディス)、サントス・ゴンザレス(フォナック)によって塗り替えられた。グエリーニもいいタイムを出したものの、コンマ何秒差でゴンザレスには及ばなかった。それでもかつてラルプデュエズでステージ優勝した(例のカメラを持った観客と接触して落車しつつもステージ優勝を果たしたというアレね)時と同じタイムなんだそうだ。
そうこうしているうちに総合10位のリーヴァイ・ライプハイマー(ラボバンク)がスタート。とうとうラスト10人に入った。
そして総合5位のウルリッヒ登場。例のごとくとても集中した面持ち。びっくりしたのは山岳のTTだというのにアタッチメントバーが取り付けてあったこと。これが吉と出るのか凶と出るのか。ホイールはというと、後輪は普通のスポークホイール、前輪はカーボンの4スポークバトンホイールをチョイス(って私、言ってること合ってるか?(^^;)。相変わらずの重たいギアで踏み出していく。
上りに差し掛かっても相変わらずアタッチメントバーを持ってシッティングのままガンガン上る。
おっと、観客にお尻を押されてちょっとヨレるシーンが。通常の山岳ステージならともかく、シビアなTTではできればちゃんと柵を設置して欲しいなぁと思ったりする。観客が左右から迫ってとても走りづらそう。見ている方も何かあったらとひやひやする。ロビー・マキュアンが激しくブーイングする観客に手を振って走り去る映像があったけれど、そういうのも多かったらしい。ランス・アームストロングも「ドイツ人らしいひどいファンがいた」というようなコメントを出してたね。相手が誰であれネガティブなアクションはやめてほしいな、ホントに。
総合2位のイヴァン・バッソがスタート。バッソもアタッチメントバーを取り付けているが、使っている様子はなかった。平坦な箇所で使ったんだろうか? 映像がなかったから不明。
そして最後の走者、ランス・アームストロング登場。チームカーの助手席には、シェリル・クローの姿が。爪を噛み不安げな表情でランスを見やる(多分)姿は「恋する女の子」そのもの。「いくつなんだ、君は」と突っ込みたい気持ちになるが、大きなお世話だ(笑)>自分
上りに差し掛かっても相変わらずの高回転。ウルリッヒと対照的なペダリングだ。ウルリッヒがとても遅く見えてしまう。
マイヨジョーヌカラーのワンピースの背中が四角く盛り上がっている。これがランスのスイッチなのか。これをオンにすると高回転で回り出し…なんてことはもちろんなく、無線機による出っぱりだ。チームカーが背後につくためにたいていの選手が無線機はつけていないのに対し、さすがUSポスタル、用意周到だ。きっと通過タイムやらなにやらもしっかり耳に届いているんだろう。案外聞こえて来るのはシェリルの声援だったりして。
その頃、イリェスバレアレスのカルペツがゴール。暫定3位のなかなかいいタイムだ。カルペツというと、そうは見えないけど新人賞候補の選手。第15ステージ終了時点でヴォクラーから7分54秒遅れの3位につけている。ヴォクラーもうかうかしていられない。
バッソとアームストロングのスタート時間には2分の差があるはずなんだけど、ついさっきバッソが通った場所をアームストロングがあまり時間を置かずに通る気がする。タイム差が詰まってきているんだろうか? と思ったらすでに20秒ほど差が詰まってきているらしい。
9.5kmの中間計測ポイントをウルリッヒが通過。USポスタルのアゼベド(ウルリッヒの前の走者だ)がつい先ほど塗り替えたトップタイムを30秒以上も上回った。かなり追い込んでいる表情。
総合3位のクレーデンが同じく中間計測ポイントを通過。ウルリッヒに次ぐ暫定2位のタイムだ。
続いて9.5km地点に現われた総合2位のバッソは暫定4位で通過。ウルリッヒと比べると、30秒以上の差がついている。
そしてあっという間にアームストロングが現われた。バッソとの差がかなり詰まっていることにも驚かされたが、もっと驚いたのはそのタイム。ウルリッヒよりも40秒近く早いタイムで通過した。速っ! 決してウルリッヒが遅いわけではなく、ランスが速すぎなだけ。
その頃、ウルリッヒよりも2分前にスタートしたホセ・アゼベドがゴール。暫定トップのサントス・ゴンザレスのタイムを25秒も上回るいいタイムではあった。が、この後の5人のいずれか、もっと言ってしまえば2人のどちらか、あるいは現状から推測すれば黄色いマイヨを着た人に塗り替えられるのは必至だ。
続いてヴォクラーがゴール。ヴォクラーはというと、アゼベドよりも4分前にスタートしているはず。途中でトーチュニヒに抜かれ、アゼベドにも抜かれ、暫定トップのアゼベドから5分近く遅れてゴールした。カルペツからも4分21秒遅れ。ずいぶん差を詰められた。
続いてウルリッヒがハンドルを投げてゴール。アゼベドのタイムを44秒上回り、暫定トップとなった。
残るはクレーデン、バッソ、アームストロングの3名。
ちょうどその頃、アームストロングがバッソに追いつこうとしていた。しばらく併走する形となったが、やがてパスして行った。
ゴール手前、クレーデンが2分前にスタートしたマンセボ(イリェスバレアレス)に迫っていた。結局追いつくことはなかったが、クレーデンはウルリッヒに次ぐ暫定2位のタイムでゴールした。
そしてランス・アームストロングがゴール前に入ってきた。ペースは落ちない。最後まで手を抜かず、スプリントでタイムを詰め、ラストはハンドルまで投げてゴールした。ウルリッヒに1分1秒の差をつけてダントツのタイムでステージ優勝。
直後に入ってきたバッソはアームストロングと2分23秒差の8位に終わった。
なんというかもう、チームの力もさることながらここまでの圧倒的な力を見せられては言葉も出ない。
もちろん個人総合トップはアームストロングのまま変わらず。バッソも2位はキープしたが、アームストロングとのタイム差が3分48秒に開いた。3位はクレーデンのまま変わらず。マンセボは6位に順位を下げ、4位ウルリッヒ、5位アゼベドという結果となった。
そしてステージ優勝者のタイムの33%以上遅れると失格いうルールから、ダヴィデ・ブラマーティ(クイックステップ)、アールト・フィアハウテン(ロット・ドモ)の2名がタイムアウトとなった。
なお、ランス・アームストロングの(スタート後1.7kmの平坦区間を除いた)上り13.8kmのタイムは37分36秒。これはマルコ・パンターニの持つ37分35秒という最速登坂記録には1秒及ばなかった。しかもこの記録、今回のような個人タイムトライアルでの記録ではなく、200km超の通常のステージで打ち立てられた記録だ。そう考えるとホントに偉大なクライマーだったんだなぁと、今更ながらパンターニの不在を思い泣きたい気持ちになった。偉大なるイル・ピラータ(パンターニの愛称。「海賊」の意)の魂が安らかに眠りますように。
●ステージ順位 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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●個人総合 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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