2004 ツール・ド・フランス 第18ステージ

コースプロフィール:
 全長166.5kmのちょっと短いステージ。

現地の天候:
 午前中のうちに降った雨で路面は濡れていたけれど、雨はすでに上がっていた。ゴール地点は雷という予報もあったけど、外れて幸い。

レースの展開:
 前日の第17ステージでバルトリ(CSC)、ベッケ(イリェスバレアレス)、トンバック(コフィディス)、ディディエ・ルー(ブリオシュ)、ジュンティ(ドミナ)がリタイヤ、そしてこの日エラス(リバティセグロス)、ルフェーブル(ブリオシュ)、ベルトリーニ(アレッシオ)がスタートしなかった。この日スタートしたのは147人。

 この日も序盤から積極的なアタックがあった。10km過ぎにニコラ・ジャラベール(フォナック)、フレチャ(ファッサ)、ジョリ(クレディアグリコル)、ガルシアアコスタ(イリェスバレアレス)、ショルツ(ゲロルシュタイナー)、フォフォノフ(コフィディス)、メルカド(クイックステップ)、ロッツ(ラボバンク)の8人の逃げが決まり、しばらく8人で逃げたが、ショルツとジャラベールが脱落。6人での逃げとなった。

 そしてこの日のレース展開を語る上で避けては通れないのがアームストロング(USポスタル)とシメオーニ(ドミナヴァカンツェ)の謎のアタックだ。この日、6人の逃げが決まったあとで、集団から単独でシメオーニがアタックした。これを追ったのがマイヨジョーヌを着たランス・アームストロング。2人は先行していた6人に追いついたが、困ったのは逃げていた6人。マイヨジョーヌが逃げにいたら、そりゃ後続は追うだろうし、追ってこられたら逃げは確実につぶされる。ホセビセンテ・ガルシアアコスタに説得されるような形でアームストロングとシメオーニは集団に戻ることとなった。
 で、なんでまたそんなことが起こってしまったかというと、その裏側には2人の間の確執が存在する。このシメオーニ、ミケーレ・フェラーリ医師のドーピング問題に関する裁判で医師の不利になる証言をした。医師の友人でもあるアームストロングはル・モンド紙のインタビューに答え、シメオーニを「嘘つき」呼ばわり。それに対してシメオーニが名誉毀損の裁判を起こし、現在係争中という間柄なのだ。シメオーニが集団からアタックするのを見たアームストロングが、つい我慢できずに飛び出しちゃったということなんだろう。
 アームストロングはステージ後のインタビューに答え、「プロトンの利を守りたかっただけ。他の選手がみんな僕にお礼しに来たくらいだよ!」とコメントしているらしいけど、それはどうかと思う。もしもせっかく逃げが決まっているのにまた飛び出す選手がいるのは集団が不安定になって困るというならアシストが追えばいいだけのこと。私はこれを公私混同だと思った。CyclingWeb.jpのレポートによるならば、シメオーニはイタリア人にも嫌われているとのこと。ホントなのかな。少なくともダビドとウナイのエチェバリアブラザース(嘘。兄弟じゃない)はランスを責める発言をしている。もちろん2人ともイタリア人ありませんので念のため。
 ま、ともあれ2人とも集団に戻って事なきを得たので、なかったことにしておこう。

 最初の山岳ポイント(4級)はフォフォノフ、フレチャ、ロッツの順で通過。すぐ後にある第1スプリントポイントはフォフォノフ、ジョリ、フレチャの順で通過した。
 70km地点で6人と集団の差は6分強。全員総合では1時間以上の差がついているため、後続はゆったりモード。翌日に個人TTを控えて、今日はのんびり行こうよという感じか。ランス・アームストロングとヤン・ウルリッヒがにこやかに談笑する姿、ウルリッヒがカメラに向かって手を振る姿、ポッツァート、トザットと話をするアームストロングの姿なんてなのを映像がとらえていた。

 特に動きがないため、山岳ポイント、スプリントポイントの通過順位だけさくっとね。
 2つ目の山岳ポイント(75.5km地点/2級)はメルカド、ガルシアアコスタ、フォフォノフ、ロッツ、ジョリ、フレチャの順で通過。ジョリとフレチャがちょっとキツそう。
 87.50km地点にある3つ目の山岳ポイント(3級)はメルカド、フォフォノフ、ロッツ、フレチャの順で通過。
 補給地点を越えて127km地点にある4つ目の山岳ポイント(3級)はメルカド、ジョリ、ロッツ、フレチャの順で通過した。この頃には集団とのタイム差は11分強にまで広がっていた。残り約40km。逃げ切りはほぼ確実だろう。  144km地点のスプリントポイントは、ジョリ、メルカド、フレチャの順で通過した。

 ラスト20kmを切った。フォフォノフがシューズのストラップを締めなおした。勝負かけるぜという意気込みか。そのフォフォノフを擁するコフィディスの監督のコメントは「フレチャもメルカドも強敵だ。グループを分裂させるために早めのアタックを掛けさせなければいけないんだろうけど…」というもの。選手も監督も互いの出方を伺っているところだろう。
 そして残り17km。まずはジョリが仕掛けた。メルカドとロッツが後を追った。いったん追いついたところでメルカドがカウンターアタック。フレチャはちょっと遅れ気味だ。
 残り15kmのあたりで一度6人のグループに戻るが、メルカドが再度アタック。後続との差を広げた。残りの5人は牽制気味。メルカドは淡々と踏んでいる。
 5人の中からガルシアアコスタが抜け出して単独でメルカドを追う。後ろの4人は相変わらず牽制気味だ。
 しばらくしてフレチャがアタック。ロッツ、フォフォノフが後を追い、ジョリがちょっと遅れた。協力して追えばいいものを、それでもやっぱり牽制している。
 最後の山岳ポイント(153km地点/4級)はメルカド、ガルシアアコスタ、フレチャの順で通過したけども、本人達にしてみれば、そんなのかまっちゃいられないというところだろう。
 残り8km。後続の3人はペースが上がりきらず、一人遅れていたジョリが追いついた。2人の逃げ切りの線が濃厚になってきた。2人と4人の差は20秒。ちょっとずつ開いていっている。ゴール前、ガルシアアコスタとメルカドで争った場合、スプリント力ではガルシアアコスタの方が上。どちらがどう動くのか。
 先頭の2人はガルシアアコスタが積極的に引いている。後続もペースが上がり、フォフォノフがちょっと遅れ気味。
 残り1km。相変わらずガルシアアコスタが先行。後ろからも迫ってきている。
 ガルシアアコスタが背後をうかがう。メルカドは前に出ない。
 そして残り300mでメルカドがアタック。ガルシアアコスタが後を追い、最後はハンドルを投げるがわずかに及ばず。メルカドがステージ優勝を果たした。悔しそうだったのがガルシアアコスタ。「チッ」と振り下ろした拳が地面に付きそうなほどの悔しがり方だった。
 後続は11秒差でゴール。メルカド、ガルシアアコスタに続く3位はフォフォノフ。以下、ジョリ、ロッツ、フレチャの順でゴールした。5位に終わったロッツはハンドルを叩いて悔しそうにしてた。

 で、11分以上後ろにいる集団では、マイヨブランを着たヴォクラーを1分56秒差で追うカザル(エフデジュ)が集団からアタックを図った。集団の先頭はヴォクラーから45秒差のカルペツを擁するイリェスバレアレス。マキュアンを集団の先頭でゴールさせたいロット・ドモも前目に上がってきている。カザルは結局しばらく逃げた後に吸収されてしまったが、見ている側を盛り上げてくれた。果敢な攻めに拍手。

 ゴールスプリントのためにスプリンターを擁するチームが先頭に上がって来た。ロット・ドモ、T-Mobile、ゲロルシュタイナーあたりが先頭を引いている。ペースが上がっているのだろう。集団が中切れを起こしている。
 ハスホフト、マキュアン、ツァベル、ホンドらの姿が見える。カスペールに引かれオグレディが前に出た。が、これはちょっと早すぎた。マキュアン、ハスホフト、ホンド、オグレディ、ダクルズ、ツァベルが争う。これを制したのはハスホフト。続いてマキュアンも入っているため、ポイント差は1ポイントしか詰まらなかった。でも勢いで言ったらハスホフトの方が上かも。第20ステージでのスプリント勝負も楽しみになってきた。

★ステージ優勝
フアンミゲル・メルカド(クイックステップ)
★個人総合(マイヨジョーヌ)
ランス・アームストロング(USポスタル)
★ポイント賞(マイヨヴェール)
ロビー・マキュアン(ロット・ドモ)
★山岳賞(マイヨブラン・アポアルージュ)
リシャール・ヴィランク(クイックステップ)
★新人賞(マイヨブラン)
トマ・ヴォクラー(ブリオシュ・ラブランジェール)
★チーム総合
T-Mobile
★敢闘賞
ホセビセンテ・ガルシアアコスタ(イリェスバレアレス)
●ステージ順位
順位名前チームタイム
1フアンミゲル・メルカドクイックステップ4.04.03
2ホセビセンテ・ガルシアアコスタイリェスバレアレス
3ドミトリ・フォフォノフコフィディス0.11
4セバスティアン・ジョリクレディアグリコル
5マルク・ロッツラボバンク
6フアンアントニオ・フレチャファッサボルトロ
7トール・ハスホフトクレディアグリコル11.29
8ロビー・マキュアンロット・ドモ
9ダニロ・ホンドゲロルシュタイナー
10スチュアート・オグレディコフィディス
spacer
●個人総合
順位名前チームタイム
1ランス・アームストロングUSポスタル78.20.28
2イヴァン・バッソチームCSC4.09
3アンドレアス・クレーデンT-Mobile5.11
4ヤン・ウルリッヒT-Mobile8.08
5ホセ・アゼベドUSポスタル10.41
6フランシスコ・マンセボイリェスバレアレス11.45
7ゲオルグ・トーチュニヒゲロルシュタイナー12.56
8カルロス・サストレチームCSC15.14
9リーヴァイ・ライプハイマーラボバンク16.25
10ピエトロ・カウッキョーリアレッシオ・ビアンキ16.33

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